アドラー心理学

アドラー心理学考察⑬ ~他者を敵と見るライフスタイル~

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 この記事では、アドラー心理学を紹介した『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』をヒントにして、いわゆる「他者を敵と見るライフスタイル」を考察していきます。

 自分も「他者を敵と見るライフスタイル」を持っていると上記の書籍を読んで感じていますので、自分のことを晒していく記事にもなります。

アドラー心理学におけるライフスタイル

 アドラー心理学では性格や気質のことを「ライフスタイル」という言葉で説明しています。『嫌われる勇気』の中では、

  • 人生における思考や行動の傾向
  • その人が「世界」をどう見ているか。また「自分」のことをどう見ているか。これらの「意味付けのあり方」を集約させた概念。

 と説明されており、性格のみならず、その人の人生観・世界観・生き方を含んだ意味づけがされています。 

 ライフスタイルは、最初は、身体的な特徴(遺伝的な元々の気質)や生育環境(家族や文化など)が大きく影響し、10歳ごろまでに無意識に形成されると言われています。

 しかし、その時々の身体的な特徴、環境に合わせて、ライフスタイルを自ら選び取ることが出来るとも言われています。

dobbyのライフスタイル

 ライフスタイルの概念を簡単に説明したところで、自分のライフスタイルを晒していきます。

回避性が強い

別記事で、自分の特性と回避性パーソナリティ症候群について書いています。

dobbyの特性と回避性パーソナリティ障害  この日記では、自分の回避性の特性について、考えたことをまとめた記事になります。 自己紹介で書いたとおり、僕には回避性パーソナリティ障...

 他者からの非難、批判をかわすために、いろいろな行動を避けたり、親密な関係でも距離を置いたりする傾向があります。その結果、他者との関わりの中で重要となる、他者貢献、他者に対する責任感、他者からの期待感・評価を回避してしまいます。以下の記事を参照ください。

僕は何を回避したいのか? その② ~他者との関わり~  この記事は前回の記事の続きとなります。 前の記事で、dobbyが回避したいライフイベントを書きましたが、この中で見えてきた、僕が回避...

 また、他者との関わりを避けるため、結婚、仕事、長生きなどの人生のライフイベントへの関わりも面倒くさくなり「仕方なく生きている」状態になっています。以下の記事を参照ください。

僕は何を回避したいのか? その① ~ライフイベント~  ここでは、発達障害、回避性パーソナリティ障害の特性があるdobbyが、人生を送る上で回避したいことについて、話していく日記になります...

他者の干渉を受けたくない 

 上記の通り、回避性の傾向があると、他者からの干渉を受けたくないという気持ちも強くなります。他者からの干渉も面倒臭いからです。

 これは、悪意を持った干渉のみならず、好意やお願いに基づく干渉も面倒くさく感じます。どちらかというと好意やお願いのほうが拒絶することもエネルギーを使うので厄介に思います。

 人は他人から何らかの好意を受けた場合、お返しに何らかの好意を示さなければならないという感情を抱きます。これを返報性の原理といいます。

 この感情自体は僕も持っているのですが、自分も好意を示さなければならない」という義務感と「自分から好意を示すような行動をしたくない」という回避性の心理の葛藤がよく起きます。

 このような心理の葛藤を持ちたくないので、例え好意であっても干渉は受けたくないのです。他者から干渉されなかったり、悪意を持たれているほうが自分の気持としては安定します。

他者を敵と見るライフスタイル

 結局、回避性が強い、人から干渉されたくない、いずれも

 他者から持ち込まれる面倒なことを避けたい

 ということにつきます。自分自身で起こした面倒なことはまだ受け入れられるのですが、他者から持ち込まれると本当に嫌です。

 それがこじれると面倒なことを持ち込む他者のことを敵とみるライフスタイルが形成されていきます。

他者を敵と見るライフスタイルの影響

 では、他者を敵と見るライフスタイルが自分の行動にどのように影響するのか、書いていきます。基本的にデメリットが多いように感じています。

褒められても嬉しくない心理

下記記事でも書いていますが、僕は褒められても嬉しくない心理を持つことが多いです。

褒められて嬉しくない心理  この記事ではメンタルヘルスの不調で休職中の自分が、「褒められて嬉しくない心理」について考えます。   自分はあまり褒められても...

 ここで取り上げている「他者に対する警戒感」、「『いい子』になることへの嫌悪感」、いずれも他者を敵と見るライフスタイルが根底にある心理と思います。

 他者を敵だと見ているから、他者に対する警戒感もあります。
 また、「いい子」になることへの嫌悪感についても、他者から求められている「本当はなりたくない自分」への反発感情の現れです。これも他者を敵と見るライフスタイルから来ていると思います。

 更に言うと、アドラー心理学において、褒めることは操作であると言われています。褒めるほうに何らかの目的があるわけですね。

アドラー心理学考察⑧ ~横の関係と勇気づけ~  この記事では、アドラー心理学を紹介した『嫌われる勇気』の内容から僕が印象に残ったことについて、その考えを書いていきたいと思います。こ...

 自分はその目的に乗ることに抵抗があるので、そういう意味でも褒められても嬉しくはないですね。

他者の言動の過剰反応

 また、他者を敵とみるライフスタイルを持っていると、干渉を嫌うあまり、他者の言動に対し過剰に反応し、勝手に悪意を持ってしまうことがあります。

 例として、アサーションで取り上げられるアイ・メッセージという技法を取り上げます。

 相手に対して自分の想いを伝えるときに、I(自分)を主語とすると、非難することなく伝えられると言われています。逆にYOU(あなた)を主語にすると、「相手をこちらで動かす」表現になり、非難めいたニュアンスになりやすいです。

 例えば、自分勝手な他者の言動を諫めるときに、ユー・メッセージだと「あなたは自分勝手な行動ばかりで本当に困るんだ!」という非難めいたニュアンスが含まれます。

 しかしながら主語をIに変えてみると、「私は、あなたが協力してくれれば、もっと良い仕事ができると思うんだ。」というように、非難めいたニュアンスを和らげる表現になります。 

 ただ、他者を敵と見るライフスタイルでは、アイ・メッセージですら受け入れられないことがあります。勝手にアイ・メッセージの裏にある本音としてのユー・メッセージを想像し、自分の行動への干渉と曲解します。

 上記の例で言うと、「私は、あなたが協力してくれれば、もっと良い仕事ができると思うんだ。」と言われても、課題の分離を持ち出し、「良い仕事が出来るかどうかは僕の課題ではなく、あなたの課題なので、僕には関係ない。だから協力する義理はない。」と反応してしまうのです。

人生のタスクを避ける 

 他者を敵と見るライフスタイルでは、仕事・交友・愛の人生の3つのタスクを避ける傾向があります。

 なぜなら、他者の信用・信頼に対し、信用・信頼で返していくのがめんどくさくて苦痛だからです。他者から信頼されても、「信頼を返さなきゃと思っても、返したくない」葛藤が生じて、苦しんでしまうのです。 

 特に愛のタスクは「私達ふたり」の幸せを築き上げるため、よりお互いを「信頼」していく関係になります。しかし、他者を敵と見るライフスタイルでは、私にしか興味が無いため、愛のタスクに向き合うのがすごく面倒なのです。

 以上のことから、他者を敵と見るライフスタイルというのは、人を信頼することが出来ず、仲間だと思えず、結果として、いろいろな人生のタスクを避けてしまう、いわゆる世間一般に思う幸せの形から遠ざかるライフスタイルだと思います。

他者を敵と見るライフスタイルを変えられない理由

 上記の通り、他者を敵と見るライフスタイルでは、幸せになるのが遠のいてしまいます。しかし、自分の場合、それでもライフスタイルを変えられない理由があります。

変化を嫌う

 人間には変化を嫌う動物と言われます。特に、コンフォートゾーンと呼ばれる「私たちが安心できる、自分のコントロール下にある、と感じられる」領域にとどまりたいという傾向があります。

 そのため、他者を敵と見るライフスタイルでは、幸せになれないということを認識しても、自分の意思でライフスタイルを変えていくことは難しいのです。

楽をしたい

 下記記事でも書いていますが、僕は人生そのものを仕方なく生きている」と思っていて、できるだけ楽をして生きることをやり過ごしたいと思っています。

休職中に思い出す言葉⑥ ~楽しいと楽は違う~  この記事ではメンタルヘルスの不調で休職中の自分が、よく思い出す言葉をシリーズで書いていきます。6つ目として取り上げるのは「楽しいと楽...

 「楽をしたい」ということは、「新たな楽しいことをするための辛いことを受け入れる努力。」はしたくなくて、「楽しいことが何もない、退屈な人生」になることを受け入れることです。

 そのように人生を考えると、他者から面倒なことも持ち込まれない、人生のタスクに向き合わず自分にしか関心を持たない、いわゆる他者を敵としてみるライフスタイルのほうが都合がいいのです。

目的にかなっている 

 また、他者を敵と見るライフスタイルを変えられない理由として、無意識のうちに「実はライフスタイルを変えないほうが都合がいい」と思っていることも理由に挙げられます。

アドラー心理学考察⑨ ~大人の発達障害と目的論  この記事では、アドラー心理学の中で、特に大人の発達障害の特性と関連付けた考察をしていきたいと考えています。ここでは目的論を取り上げた...

 傍目から見て幸せに遠のくようなライフスタイルでも、自分にメリットがあれば変えないですよね。それは自分にライフスタイルを変えないほうが都合がいい、すなわち「自分は幸せになりたくないから、他者を敵とみなしておきたい。」という目的があるからです。

 先に書いたことと合わせると「仕方がなく生きているから、楽したい。」という目的があり、だから「面倒くさいことをなるべく持ち込まないようにするために、他者を敵とみなして受け入れない。」というライフスタイルを選択するということになります。

まとめ ~結局、ライフスタイルは変えられるのか?~

 以上で、他者を敵と見るライフスタイルについて書きました。まとめると、

  • 回避性が強い、人から干渉されたくないということが、自分なりの「他者を敵と見るライフスタイル」を形成する要因となった
  • 他者を敵と見るライフスタイルでは、幸せになるのが遠のいてしまう。
  • 他者を敵と見るライフスタイルを変えることは容易ではない。

 ということになります。

 結局、自分の「仕方なく生きている」という考えが、下記のアドラー心理学の行動目標に沿っていないから、ライフスタイルを変えることが容易ではないのだと思います。

アドラー心理学の目標
  • 人生面での行動目標
    ①自立すること
    ②社会と調和して暮らせること
  • 行動を支える心理的目標
    ③私には能力があるという意識
    ④人々は私の仲間であるという意識

 この中で、特に行動を支える心理的目標が自分の考えと違っているのです。

③私には能力があるという意識
 ⇒能力はあるけど、それを使うのはめんどくさい。

④人々は私の仲間であるという意識
 ⇒他者は敵というライフスタイルを変えたくない

 ということになります。

 そうなると、自分の責任で、他者を敵と見るライフスタイルを持ったまま、「仕方なく生きている人生」を「幸せになることなく楽に生きる」ことを選択するということになります。

 一方、「仕方なく生きている人生」を「幸せになることなく楽に生きる」行き詰まりを感じています。

 それは、自分がメンタルヘルスの不調に陥り、休職するまで追い込まれた理由の一つに他者を敵と見るライフスタイルが関係していると思っているからです。そして、「仕方なく生きている人生」とはいえ、それが嫌だから死ぬということは無理だからです。

 ただ、その一方、ライフスタイルを変えることが怖いということもあり、なかなか「幸せになる勇気」を持てないでいます。幸せになるためにはしんどいこと、苦痛なことも受け入れないといけないと思っています。

 結局、生きている以上、どのような人生であっても、何らかの苦痛があることを理解し、それを、自己責任で結果を受け入れることなんだろうなと思います。

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