アドラー心理学

書籍紹介⑩ ~嫌われる勇気~

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 この記事は、書籍紹介となります。
 ここで紹介するのは岸見一郎・古賀史健共著によるアドラー心理学を紹介した書籍『嫌われる勇気』となります。2014年に発売されベストセラーとなり、2017年1月にはドラマ化もされています。

 アドラー心理学のことについては、自分の勉強のため、また色々と書いていきたいのですが、この本について紹介させていただきます。

 この書籍を手に取ったのは2022年の年明けでした。この書籍の存在は発売当初から知っていましたが、『嫌われる勇気』というタイトルに対し、「嫌われるのは嫌だ!」という気持ちを抱いたため、読むことがありませんでした。
 ただ、休職して自分のメンタルについて思い悩む時間が出来たこと、他のメンタルヘルスの本でこの本が紹介されていることを契機として、『嫌われる勇気』を読んで見ることにしました。その結果として、自分の「嫌われるのは嫌だ!」という認識が改まる事になりました。

著者紹介

この本は岸見一郎さんと古賀史健さんの共著になります。

岸見一郎

岸見一郎 プロフィール|講演依頼・講師派遣のシステムブレーン (sbrain.co.jp)によると、

  • 1956年京都生まれ
  • 京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学(西洋哲学史専攻)
  • 専門の哲学(西洋古代哲学、特にプラトン哲学)と並行して、1989年からアドラー心理学を研究。

とあります。

 日本アドラー心理学会の設立は1984年ということで、早期よりアドラー心理学の研究をしていたと言えます。そして、『嫌われる勇気』の出版により、アドラー心理学の第一人者と呼ばれています。

古賀史健

STAFF | 株式会社バトンズ (batons.jp) によると、

  • 1973年福岡県生まれ。出版社勤務を経て、1998年に独立
  • 一般誌・ビジネス誌等のライターを経験後、現在は書籍のライティングを中心に活動。
  • 2014年、ビジネス書ライターの地位向上に大きく寄与したとして「ビジネス書大賞・審査員特別賞」受賞。
  • 『嫌われる勇気』の他、堀江貴文さんの『ゼロ』など、多くのビジネス書のライティングを担当

 アドラー心理学は1999年に書店で岸見一郎さんの著書を読んだことがきっかけです。「自らが未来を開く可能性を説くアドラーの価値観に励まされた」とし、共著企画を出版社に持ち込んだことで『嫌われる勇気』という書籍が世に出るようになりました。

章立てと内容

 この書籍は、アドラー心理学を修得している哲人と、悩みを抱える青年との対話形式で書き進められています。章立てと対話の内容は以下のとおりです。

  • 第一夜 トラウマを否定せよ
    ・アドラー心理学の目的論にもとづいて、トラウマを否定。
    ・人の性格や気質(ライフスタイル)は後天的に選び取ったもので、
     選び直しが出来ること。
  • 第二夜 全ての悩みは対人関係
    ・人間の悩みはすべて対人関係に起因すること。
    ・劣等感と優越性についての解説。
    ・「仕事」「交友」「愛」の3つのタスク(人間関係)への向き
     合い方の解説
  • 第三夜 他者の課題を切り捨てる
    ・承認欲求の否定。
     →我々は他者の期待を満たすために生きていない。
    ・自分の課題と他者の課題に分ける「課題の分離」の解説
  • 第四夜 世界の中心はどこにあるか
    ・他者を仲間だとみなし、そこに自分の居場所を感じられるように
     する「共同体感覚」の解説。
    ・「私は他者に貢献」と思えることで自らの価値を実感すること
  • 第五夜 「いま、ここ」を真剣に生きる
    ・共同体感覚の3つのキーワードである「自己受容」「他者信頼」
     「他者貢献」の解説。
    ・幸福とは貢献感であること。

    ・「今ここを真剣に生きる」ことを大事とすること。

 それぞれの章でアドラー心理学の個別の考えを、青年の質問に対して哲人が答える形で紹介していきます。そして、最後の第五夜で個別の考えをつなげていき、「どのような生き方をするのがいいか?」という問いに対し、「今ここを真剣に生きる」というキーワードで締めています。

感想

アドラー心理学の目標が大事

 この書籍でも触れられている「アドラー心理学の目標」は以下のとおりです。

アドラー心理学の目標
  • 人生面での行動目標
    ①自立すること
    ②社会と調和して暮らせること
  • 行動を支える心理的目標
    ③私には能力があるという意識
    ④人々は私の仲間であるという意識

 アドラー心理学の個別の考え方は、一見すると世間とは反する考え方だったり、他人に冷たい考え方と思えるようなところもあります。しかし、根底にこの目標があるからこそ、個人が貢献感を持つようになり、幸せにつながるという、最後の第五夜で書かれていることが成り立つと思いました。

決して「嫌われるススメ」ではない

 「嫌われる勇気」というタイトルや「トラウマ」「承認欲求」の否定など、いわゆる既存の常識に対する逆張りの印象が強いのですが、先に上げたアドラー心理学の目標を見る限り、決して「嫌われることのススメ」を説いているわけではありません。

 ただ、読み方には注意がいる本です。
 最後まで読み進めると伝えたい内容が明確になっていきますが、既存の常識とは違うことを話しているので、違和感を感じている人も多いようです。

 メンタルヘルスの不調の方は、回復して、最後まで読む集中力を確保した上で読みましょう。きちんと最後まで読んで初めて意味を成す書籍であり、また、誤解してしまう可能性をはらんでいるものでもあります。回復していない時に読んでしまうと、むしろ辛くなる本かもしれません。

まとめ

 以上で『嫌われる勇気』についての紹介です。

 他者に対して自らすすんで貢献感をもつ行動をしていくことで、自身の幸せにつなげていくという生き方を説いた本だと僕は思いました。そのアプローチが従来の考え方と違っているだけです。

 ただ、これを実践することの難しさも感じます。特に日本人にとっては「自己犠牲」「同調圧力」など特有の考え方があり、この考え方に反するところがあるだけに、よけいに実践が難しいと思いました。

 しかし、実践をするのが難しいとは言え、人間関係などの悩みを抱えている人には非常に有用なヒントを与えてくれる書籍だと思います。しかし、誤解を受けやすい本でもあります。いろいろな書籍・記事を読みながら、自分の合うものを見つけていただければと思います。

(『嫌われる勇気』の続編として、『幸せになる勇気』も出版されています。一緒に読むとよりいっそう理解が深まると思います。)

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