大人の発達障害

書籍紹介⑥ ~『発達障害サバイバルガイド』~

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 この記事は、書籍紹介となります。
 ここで紹介するのは、借金玉さんの『発達障害サバイバルガイド』という本になります。
 発達障害の人にとって日常生活を過ごす上で避けられない数々のハードルをなんとかクリアしていくためのライフハックを記した本になります。

 この本を買ったのは2021年5月です。
 2回めに発達障害の診断がおりてまもなくの頃でした。
 以前、借金玉さんの著書『発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術』という本を読んでいて、いろいろとヒントになったことが多かったです。新作があるということで買った次第です。

著者紹介

 借金玉 | 著者ページ | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース (toyokeizai.net)から一部抜粋してみました。

  • ADHD(注意欠如・多動症)の発達障害者。
  • 幼少期から社会適応ができず、紆余曲折を経て早稲田大学を卒業後、金融機関に就職。
  • まったく仕事ができず逃走した後、一発逆転を狙って起業。
  • 一時は調子に乗るも大失敗し、それから1年かけて「うつの底」を脱出。
  • 現在は営業マンとして働く。

 これだけ見ても波乱万丈なのですが、一連の著書の中には、さらにいろいろなエピソードが盛り込まれています。
 高校卒業のあと友人3人で同居して6万円ずつ出して生活した話、
 金融機関で事務の仕事ができなくて2年で辞めた話、
 起業で2,000万円の借金を背負いそこから「借金玉」というペンネームをつけた話、
 そして、友人に「いい加減にしなさい。」と言われ、不動産会社に契約社員として再就職した話などなど、借金玉さんの34年の人生は波乱万丈です。

章立てと内容

この本の章立てと内容は以下のとおりです。

  • はじめに 食っていくための生活術
  • CHAPTER1 生活環境  サバイバルに絶対必須の設備ハック
  • CHAPTER2 お金    貧困と借金から学んだマネーハック
  • CHAPTER3 習慣    くりかえしが苦手な僕らの365日ハック
  • CHAPTER4 在宅ワーク だらだらに勝つ自宅作業ハック
  • CHAPTER5 服     おしゃれとか以前の身だしなみハック
  • CHAPTER6 食事    ずぼら完全対応版自炊ハック
  • CHAPTER7 休息    生き延びるための休日ハック
  • CHAPTER8 うつ    不安とともに生きる再起ハック
  • おわりに 本当のあなたを「ハックするな」

読書感想と印象に残る考え方

 発達障害の人にとって、すごく優しいライフハックの本だと思いました。
 著者の34年の波乱万丈の人生経験の中で得られた考え方数々のハックは、普通の人の日常生活を想定した仕組みに適応できない人々にとっては大変貴重なものになります。

 この本で特に僕が参考にしたい考え方は以下のものです。

人生をよくするのは「努力」ではなく「設備投資」

 この本の中に「貧しく不便な生活をしている人ほど、設備投資によって生活は簡単に、大きく快適になる」と書いてありました。
 特に発達障害の人はいろいろなことが出来ない割に独力でやろうとするところがあります。結局、面倒くさいが勝ってしまって、何もしなくなってしまいます。

僕の場合片付けが出来ずに、部屋が常に散らかっています。

 僕は、幸運にも設備投資が出来た、恵まれている人間です。面倒くさいが勝ってしまって、何もしなくなっても、設備投資の恩恵を受けた結果、一応部屋はゴミ屋敷に陥らず、ご飯も食べれて、最低限の人間らしい生活は送っていると思います。

参考までに、最近人生をよくするために「設備投資」をしたのは洗濯乾燥機です。もともと乾燥機なしの洗濯機を使っていたのですが、洗濯物を干す、取り込む作業が無くなり、労力が大きく減りました。

 「設備投資をする」考え方は、発達障害の方だけではなく、忙しすぎて生活を整えることに時間を割けない方にも参考になると思います。

「この一手を減らせないかな?」と常に考える

 これは、普通の人の日常生活を想定した仕組みに対応するため、最低限の作業を確保しつつ、できるだけ手間を減らしていく考え方です。さらに、手間を減らすことで、習慣として定着しやすい効果もあります。

 著者は「やるべきことに取り掛かるためのハードル」(この本の中では「スタートコスト」と呼んでいます)が発達障害の人は特に高い傾向にあり、それが習慣化を苦手なものにしていると書いています。「この一手を減らす」ことにより「スタートコスト」を極限まで小さくしていくことで、発達障害の人でも習慣化できるところまで行動のハードルを下げていくことを提唱しています。

 そして、「この一手を減らす」手段として、「一元化、常時一覧化、省エネ」を取り上げています。

  • 一元化
    必要なものが分散せず、手が届くところにある。
  • 常時一覧化
    毎日やらなければいけないことを「目に入るように」セットする。
  • 省エネ
    「やるぞ」という意思決定コストを普段から節約する

 たとえば、「外出する時に必要なものを忘れてしまう」ことを例に取ると、

  • 一元化
    →外出に必要なものを常に1箇所にまとめる。
  • 常時一覧化
    →外出に必要なものの一覧表を目につくところに貼っておく。
  • 省エネ
    →イレギュラーで必要になったものは、気がついた時に準備
     して、玄関など通り道に置いておく。

 ということになります。

 この考え方を常に意識しておくことで、困りごとがあっても、何らかの対応を打てるようになります。

頑張るのは惰性、休むのは意志の賜物

 僕は「仕事があるから休みたくない」「休日も休みたくない」など、とにかく休む事ができない人間でした。なので、「頑張るのは惰性」という言葉がまず自分の心に刺さりました。

 改めて思い返してみると、確かに何かを解決するということではなく、惰性でズルズルと休まないでいることがわかりました。下記記事も併せて見ていただければ、その心理がわかります。

「仕事があるから休みたくない」という心理  この記事ではメンタルヘルスの不調で休職中の自分が、「仕事があるから休みたくない」という心理について、自分の休職前を振り返りながら書い...
「休日も休みたくない」心理  この記事ではメンタルヘルスの不調で休職中のdobbyが、「休日も休みたくない」という心理について、自分の休職前を振り返りながら書いて...

 目的を達成するため、成果をあげるためには、心と体の疲労を回復して、意志を持って休むということが必要なのだと感じさせてくれました。

まとめ ~意識の低い自己啓発本を読もう~

 以上、この本の感想でした。
 発達障害の人の多くは、普通の自己啓発本を読んでも困りごとは解決できないと思います。それどころか、「何で僕は出来ないんだろう」と自責の念にかられることもあります。
 なぜなら、たいていの自己啓発本が「日常生活を想定した仕組みができるという前提で書かれたもの」であるからです。

 それに対し、この本は「『なんだか人生がうまくいかない』と思ったら読む世界一意識の低い自己啓発書。」という宣伝文句の通り、発達障害の人でも苦もなく読めます。

この本ばかりではないのですが、発達障害の人は「発達障害の人向け」と銘打った自己啓発本を読んだほうがいいと思います。

 ただ、注意点ですが、すべてのハックをやろうとせず、「なんとなく役に立つかなぁ」と思ったものを少しずつ実践してみるのが良いかと思います。発達障害の症状は人それぞれです。自分に合ったものを取り入れていきましょう。


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