メンタルヘルス

書籍紹介⑦ ~『発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術』~

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 この記事は、書籍紹介となります。
 ここで紹介するのは、借金玉さんの『発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術』という本になります。 

 2018年に僕が1回目に発達障害の診断を仰いだ時に買いました。
 発達障害の特性により仕事のミスやトラブルが増えつつあったときです。
 通常の自己啓発本に書いてあることが馴染めず、途方に暮れていた時に「発達障害者が普通に仕事をするために何をしたらいいのか?」という視点で書かれたこの本に飛びつきました。ニュースサイトでも紹介されており、内容を一部読んだうえで、これなら苦もなく読めるかもと思いました。

著者紹介

 借金玉 | 著者ページ | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース (toyokeizai.net)から一部抜粋しました。

  • ADHD(注意欠如・多動症)の発達障害者。
  • 幼少期から社会適応ができず、紆余曲折を経て早稲田大学を卒業後、金融機関に就職。
  • まったく仕事ができず逃走した後、一発逆転を狙って起業。
  • 一時は調子に乗るも大失敗し、それから1年かけて「うつの底」を脱出。
  • 現在は営業マンとして働く。

 これだけ見ても波乱万丈なのですが、一連の著書の中には、さらにいろいろなエピソードが盛り込まれています。
 高校卒業のあと友人3人で同居して6万円ずつ出して生活した話、
 金融機関で事務の仕事ができなくて2年で辞めた話、
 起業で2,000万円の借金を背負いそこから「借金玉」というペンネームをつけた話、
 そして、友人に「いい加減にしなさい。」と言われ、不動産会社に契約社員として再就職した話などなど、借金玉さんの人生は波乱万丈と言ってもいいでしょう。

章立てと内容

 この本の章立てと内容は以下のとおりです。

  • はじめに
    「僕はジョブスではない」ということを理解するのに30年近くかかった話
  • 第1章 自分を変えるな、「道具」に頼れ 【仕事】
  • 第2章 全ての会社は「部族」である 【人間関係】
  • 第3章 朝起きられず、夜寝られないあなたへ【生活習慣】
  • 第4章 厄介な友、「薬・酒」とどう付き合うか【依存】
  • 第5章 僕が「うつの底」から抜け出した方法【生存】
  • おわりに
    少しずつだけど、発達している

 別記事で紹介した借金玉さんの著書『発達障害サバイバルガイド』が発達障害の生活面のライフハックを重視したであるのに対し、この本は仕事や会社の人間関係ライフハック・薬や酒との付き合い方・発達障害の二次障害である双極性障害やうつについて多くのページが割かれています。

読書感想と印象に残った考え方

 この本も発達障害の人にとって、すごく優しいの本だと思います。 

 「すごい仕事術」とはあるのですが、「発達障害の人でもできると思わせることがすごい」仕事術です。決してハードルが高い本ではないので、難なく読み進めることが出来ました。 

 そして、仕事術という名前でありながら、発達障害というものを知る上で欠かせない本になっています。発達障害の特性、薬の紹介と服用の所感、さらに二次障害であるうつへの対応など、仕事術の枠を超えた、発達障害に向き合う内容になっています。

「集約化」「一覧性」「一手アクセス」

 第1章の中で、発達障害者の仕事の原則として、「集約化」「一覧性」「一手アクセス」の3つを掲げています。

  • 集約化
    →必要なものをバラバラに保管せず、一箇所に集約する。
  • 一覧性
    →すべてのものをひと目で見通せるようにする。
  • 一手アクセス
    →ひとつひとつの物に「すぐに手が届く」ようにする。

『発達障害サバイバルガイド』に紹介されている「一元化」「常時一覧化」「省エネ」の3原則とほぼ同じ考え方です。

「集約化」は「一元化」と、「一覧性」は「常時一覧化」と一緒の考え方です。「一手アクセス」については、すぐに手が届く状態にしておくことで、探す手間などを「省エネ」することが出来ます。

 そして、この3つの原則を自分の努力でなく、道具に頼ることを推奨しています。
 これも『発達障害サバイバルガイド』の中で紹介されている「設備投資」につながる考え方です。

 この本の中では、「集約化」「一覧性」「一手アクセス」に通じる、かばん、バインダー、手帳などの道具について紹介されています。 

 また、別なところでは「シャチハタやハンカチなど同じものをいくつも買って、会社の机、かばん、家などあらゆるところに突っ込んで忘れ物を防ぐ」ということも言っています。

 これも広い意味で3原則を実現するために、「自分の努力でなく、道具に頼っている。」考え方だと思います。

部族の掟

 第2章にある、職場の人間関係を象徴する言葉です。

 著者は、「職場というのは一つの部族。」とし、自らの体験から「部族の掟」に従わないものは仲間ではないという扱いをされることを説いています。

 そして、「空気を読む力」がない発達障害者が「部族の掟をいち早く読み取り、順応する」ために、周囲の人々に「褒め上げ」「面子」「挨拶」などの好意を態度で示すこと、すなわち「見えない通貨」を支払うことが必要であると言っています。

 一方「部族のおかしな掟」を茶番として読み取る能力を「茶番センサー」と著者は言っていて、部族に居続けたいのであれば、その茶番センサーを止めることを進めてます。

僕の場合、「見えない通貨」を周囲に支払ってこなかったこと、「茶番センサー」を働きっぱなしにしていたことで、職場の人間関係を悪くしたと思います。

 こうして、著者は職場という一種の「部族」の生き残り方を説いています。
 その一方で、「給与や社会的な評価などを天秤にかけ、合わなければ即座に逃走しましょう。」とも著者は言っています。

 もちろん、「部族の掟」へ順応する努力は大事ですが、自分の価値観も大事です。

 ここで語られている生き残り方は「本心とは違っていても、周囲に好意の態度を示しましょう。」「違和感を感じても変だということは止めておきましょう。」というニュアンスも入っているように感じました。

 なので、「自分の価値観を曲げてまで、部族の掟に対応しても、自分のメンタルヘルスを壊すだけ」と思ったら、その部族から離れることも、自分を守る上で大事なことだと思います。

飲酒から「文化的な側面」が失われ始めたら危ない

 幸いにして、僕は飲酒にハマってメンタルヘルスを悪化させたことはないのですが、お酒を飲む上で「文化的な側面」、すなわちお酒そのものの味を楽しむ、料理を楽しむ、会話を楽しむということは非常に大事だと思います。
 そうすることで初めてお酒は「ストレス発散」をするいい道具になっていくのだと思います。

 著者のような「睡眠薬をつまみに酒を飲む。」というのは、お酒の付き合い方として良くないし、メンタルヘルスをボロボロにします。こういう状態に陥らないよう、僕もお酒との付き合い方を考えてます。多分そこは大丈夫ですけど。

「死に覚えて生きていく。」

 この本の一番最後に書かれている言葉です。 
 ゲームの「死に覚え」のように何度も失敗をくり返しながら生きていきましょうと説いています。 

 僕は発達障害の特性を抱えているおかげで、仕事や人間関係などさまざまな失敗をくり返してきました。ただ、一番失敗だと思うのは、失敗による非難・批判を避けてきたために、失敗することを怖がってきたことだと思います。

失敗を避け続けた結果、余計非難・批判を呼ぶようになって、追い詰められてしまいました。

 失敗をくり返しながら「死に覚えていく」、そこから「生きやすくなる方法」を見つけていく。そんな姿勢が生きる上で必要なのは間違い無いと思います。

まとめ ~意識の低い自己啓発本を読もう~

 以上、この本の感想でした。
 この本は「仕事や人間関係がうまくいかない全ての人のための「日本一意識が低い」自己啓発書。」という宣伝文句の通り、発達障害の人でも苦もなく読めます。

 そして、この本は発達障害の特性や経験談、薬の話、二次障害であるうつの話など、発達障害の人が苦しむであろうことが、著者の体験から書かれており、共感を持って読み進めていくことが出来ます。

 別の記事で紹介している『発達障害サバイバルガイド』とセットで読むと、よりヒントが見つかると思います。 正直、自分が実際にやったライフハックは少ないのですが、それでも考え方は大いに参考になりました。

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 発達障害の症状は人それぞれです。自分に合ったものを取り入れていきましょう。普通の自己啓発本よりも遥かに考え方、ライフハックは参考になります。

 最後に大事なことなので何度も言いますが、たいていの自己啓発本が「日常生活を想定した仕組みができるという前提で書かれたもの」なので、普通の自己啓発本を読んでも困りごとは解決できないと思います。発達障害の人は「発達障害の人向け」と銘打った自己啓発本を読んだほうがいいということを改めて主張しておきます。

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