この記事では、発達障害の診断を受け、メンタルヘルスの不調で休職中のdobbyが、「怒り」について考えた記事になります。この記事では発達障害の特性と怒りとの相関について、僕が思っていることを書いていきたいと思います。
読んでいただくに当たり、最初に下記記事を見ていただければと思います。
特に下記記事を読み進める際には、「怒りは二次感情」という前提を頭においてください。怒りを感じる前には落胆・心配・不満・悲しみ・寂しさ・傷つきなどのネガティブな『一次感情』があります。この一次感情がこじれると、怒りという二次感情に繋がるということを意識していただければと思います。
発達障害の人の怒りの傾向
発達障害の特性を持つ人は怒りの感情が出やすいという傾向があります。ADHDの特性が強いと特に怒りの感情が出やすいと言われていますが、ASDの特性も怒りにつながる事があります。その両方について、書いていきます。
ADHDの特性と怒り
一般に、ADHDの特性がある人は、些細なことで急に怒り出しやすい特徴があると言われています。下記記事でも触れられている、不注意、多動性、衝動性が大きく関係していると言われています。
- 不注意
・失くし物や忘れ物が多い。
・納期やスケジュールをよく忘れる。
・人の話を一定時間集中して聞けない。 - 衝動性
・予測や考えなしに行動してしまう。
・目の前のことを優先し、やるべきことを先送りにする。
・相手の話を待てない。 - 多動
・じっとしていられない。
・動き回る。
・しゃべりすぎる。
上記の特性が原因となり仕事や日常生活に支障をきたすことで、他人から行動をたしなめられたりします。そのことで、不安や不満をいだきます。また、行動をたしなめられることで、自己嫌悪に陥ったりします。
また、衝動性、多動性の影響で他人と行動のペースが合わなくなると、そのことでもイライラしだします。ADHDの特性があると、それだけ怒りの原因となる、不満、不安などのネガティブな一次感情を持ちやすいのだと思います。
さらに、ADHDの特性があることで、怒りの感情をコントロールすることが難しくなってしまいます。「怒ったら後々どうなるか」ということを考えず、衝動的に「怒りたい」と思って行動してしまいがちです。
そして、アンガーマネジメントの一つである「怒りをやり過ごす」ということも、ADHDの特性を持っている人にとってはやりにくいことだと思います。僕がそうなのですが、一旦怒りの感情が出てきてしまうと、その感情に囚われ、「怒りをやり過ごす」ということがなかなか出来ません。
解決策は「一旦落ち着くこと」ということしか考えられないのですが、それが難しいです。
ASDの特性と怒り
また、ASDの特性も不満や不安などのネガティブな一次感情を生み出しやすいため、怒りの原因となり得ます。
- コミュニケーション及び相互関係の障害
・人の気持ちを理解するのが苦手。
・冗談や比喩が理解できない。
・興味のあることを一方的に話し続ける。
・非言語的なサイン(表情・目配せ)を読み取るのが困難。 - 同一性へのこだわりや興味・関心の狭さ
・日課・習慣の変化や予定の変更に弱い。
・特定の物事に強いこだわりがある。
「人の気持がわからない」などのコミュニケーション及び相互関係の障害によって、自分では意識していなくても 他人に不快な気持ちを抱かれることがあります。場合によっては強い指摘や叱責を受けることがあります。
ただ、本人にとっては特に悪意や迷惑といったことは意識していないため、不快に思われる理由がわかりません。理由がわからないまま「また叱責されるんじゃないか」と不安に思ったり、「何で叱責されるのか。」と不満に感じたりします。
そして同一性へのこだわりがあることで、急な変更が起こると、臨機応変な対応ができなくてパニックに陥ることがあります。
怒りも二次障害の一つ?
上記の通り、発達障害の特性があると、ネガティブな一次感情を持ちやすく、その結果として怒りの感情を抱きやすい傾向にあります。
この過程は、発達障害の特性がメンタルヘルスの不調を招くという二次障害のメカニズムに似ているように思います。発達障害の二次障害については、下記記事も参照ください。
上記記事の中で、「普通の人の日常生活を想定した仕組みに対応できないことで、発達障害者はストレスを抱えやすかったり、周囲との軋轢を引き起こしやすい傾向があります。」と書きました。これが原因となってメンタルヘルスの不調を引きおこしてしまうのが発達障害の二次障害になります。
発達障害の特性がある人が怒りの感情を抱く過程も、二次障害と一緒です。
- 普通の人の日常生活を想定した仕組みに対応できないことで、特に発達障害の特性を持っている人はストレスを抱えやすかったり、周りとの不適応を引きおこしやすい。
- ストレスや、周りとの不適応が原因となり、不安や不満などのネガティブな一次感情を溜め込む。
- その結果として、怒りのコントロールが難しくなり、周囲に当たり散らす。または、逆に我慢を重ね、怒りを大爆発させてしまう。
以上のことから怒りの爆発は発達障害の二次障害の一つと言えますし、怒りの感情はメンタルヘルスの不調の一つのサインとも言えます。
ネガティブな一次感情の取り扱い方
「短期的な怒り」に効果的な「怒りをやり過ごす」方法については、別記事で紹介しています。しかし「怒りをやり過ごす」のは怒りを感じた時の対処療法であり、怒りの感情のコントロールと言う意味では、これだけでは限界があります。
怒りの感情を普段から抱かないようにするには、怒りの原因となるネガティブな一次感情の存在を知り、どのように取り扱うかを考える必要があります。
特に発達障害の特性のある人は、上記の通りネガティブな一次感情を多く抱え込みがちです。「自分の困りごとを整理して、自分が出来る対処法や周囲にお願いすることを考える。」という発達障害の心理治療をすすめることによって、ネガティブな一次感情への対処法も確立出来るようになると思います。
他者との折り合いをつける
怒りを感じる場面というのは、たいてい他者との折り合いがつかないときです。
特に発達障害の特性を持っている人にとっては、意見の対立が起こると、「自分が100%正しい」か「相手が100%正しい」の二択になりがちです。
ただ、自分と相手の価値観・ものの見方・考え方が100%一致することはありません。
相手の価値観・ものの見方・考え方に配慮しながら、自分の考え方とすり合わせて、相手のいいところを取り入れていくことが、「折り合いをつける」ということになります。
「折り合いをつける」ということが出来ると、相手のことも考慮できるようになります。「相手を屈服させるために怒りをぶちまける」とか、「相手のいいなりになって我慢してストレスをためる」などの行動が減っていきます。
まとめ ~結局は一次感情の取り扱い方~
上記の通り、発達障害の特性と怒りとの相関について書いていきました。まとめると、
- 発達障害の特性が影響すると不安や不満を抱え込みやすい
- 怒りの感情もコントロールしにくい
- 怒りも二次障害の一種
- 怒りの根本的な対策は一次感情への対処、そして他者との折り合い
ということになります。
自分のそうなのですが、怒りのコントロールは難しいと感じます。
子供のころは、大人になると、「成長して怒りのコントロールもできるようになるだろう」と思ったのですが、実際に大人になってみると、怒りのコントロールの困難さが増しているように感じます。
大人になると、人間関係も広がり、時には嫌な人間関係にも対峙しなければなりません。また社会的な責任・立場も重くのしかかります。そのようなストレスにさらされるとネガティブな一次感情を抱きやすくなります。
まずは、そのことに気がついていただければいいのではないでしょうか。気づきを得ることによって、何らかの対処方法が見つかると思います。