久しぶりに書籍紹介です。
ここで紹介するのはカレー沢薫さんの漫画『なおりはしないが、ましになる』となります。『月刊!スピリッツ』2020年1月号から連載されており、単行本は2022年7月末現在で2巻出版されています。
僕がこの本を知ったのは、
「すべての職業に適性ナシ」と判定された人の選択 | なおりはしないが、ましになる | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース (toyokeizai.net)
を読んだことがきっかけです。
最近転職サイトの適正職業診断を受けて、「事務アシスタント能力以外はあまり適正なし」という結果が出ていたので、気になりました。
今までよく20数年間会社員を務めていたと、我ながら思います。
そして、僕も発達障害持ちであり、いろんな困りごとを抱えて生きています。体験談は多ければ多いほど安心するので、カレー沢さんの体験もヒントにしたいなと思い、この書籍を買いました。
著者紹介
カレー沢薫 – Wikipedia によると、
- 2018年6月1日から「無職兼作家」と自称している、漫画家・コラムニスト
- 派遣社員として派遣切りに遭ったことを明らかにするなど、負け組を自称
- 風刺を交えながら、人語を話す動物と人間を中心とした、不条理なギャグを中心とした作風
という感じです。
僕は、この作品を読むまで存じ上げなかったのですが、自分が不条理なギャグが大好きということがあり、他の作品も読んでみたいと思っています。
内容
カレー沢さんの体験に基づいた、下記のような発達障害にまつわる話を、シュールな絵と笑いを交えながらで書き上げられています。
・発達障害の困りごとと工夫
・発達障害の検査、診断、投薬
・発達障害者の集会の様子
・家族(主に旦那さん)との関わり
などなど。。。
あと、単行本には、医療監修もされている東京リワーク研究所の五十嵐良雄先生の「発達障害」についてのより詳しいコラムも掲載されています。
カレー沢さんの日常生活の体験と照らし合わせて専門的な見識が付け足されているので、コラムの内容も大変わかりやすいものになっています。
感想
僕が大好きな不条理なギャグが満載で、しかも発達障害の傾向にある人からすると、「僕もそういうところがある」と共感できることが多いので、一気に読めました。
その上、医療監修もしっかりしているので、発達障害傾向にある人に対する理解が高まると思います。
この中で五十嵐先生の「発達障害の人は発達障害の話に引かないんですよ。」というのはまさにその通りです。
普通の人にとっては「なんでこんなことも出来ないの?」と唖然とするようなことも、僕みたいな発達障害の傾向のある人からしてみると、普通にあることです。
だから、この書籍を読むと「『同じようなことで悩んでいる人もいっぱいいる』と思えるようにはなるのでは?」と感じました。
印象に残ったこと
僕が、この書籍の中で印象に残ったことを4つ取り上げます。
タイムロッキングコンテナ
仕事を始める際に、スマートフォンをタイムロッキングコンテナ(一定時間すぎないとロックが解除できない箱)に入れて、仕事中に集中しようとする話です。結局カレー沢さんは仕事中もスマホが気になり、コンテナに入れる決断ができなくなるという新たな問題を抱えることになります。
僕は習慣化のことをこのブログでも記事にしていて、スモールスタートのこともブログに書いています。
タイムロッキングコンテナを入れるのもスモールステップの一つだと思うのですが、仕事をやりたくなくなると、スモールステップ自体やらなくなるなぁと思って共感しました。
清掃・生活役員の話
町内会の中での役員を引き受ける際に、うっかり清掃役員になってしまった話です。
カレー沢さんがコミュニケーションの問題から絶対に受けたくないと思っていた清掃役員を、旦那さんが「掃除が好きだから」という理由で引き受けてしまいます。
その原因の一つに、カレー沢さんの「やりたくない」意向が旦那さんに伝わっていないコミュニケーションの問題がありました。
僕も、コミュニケーションの苦手さから「何も言わなくても察してほしい」という気持ちが「わかっているだろう」と思い込んでしまいます。
ただ、実際のコミュニケーションを避けてしまうのは、夫婦間ですら認識の違いは出てくるので、「分かっているだろう」は危険だと思いました。
といいつつ、コミュニケーション自体「やりたくない」を回避してしまう自分もいるので、難しいですね。。。
思考が止まらない
思考が止まらないこと自体は発想がよく出てくる利点はあると思うのですが、ネガティブな思考が止まらないと欠点にもなります。
カレー沢さんの場合、片付けの手順を考えるだけで力尽きるとか、何気ない一言からネガティブな思考を増幅させて人間関係を悪く捉えてしまうなどのエピソードが書かれています。
僕も同じように思考が止まらなくて、カレー沢さんと同じような悩みを抱えています、
以前書いたブログの通り、褒められること、成功体験などもネガティブに考えて避けてしまう思考もあるかもしれません。
掃除に興味がない
掃除や片付けができないのはADHDの不注意などの特性の影響だと思っていました。「片付けたくても片付けられない」と思っていたのです。
ただ、カレー沢さんの父親のエピソードを見て「そもそも片付けた後の状態」にメリットや興味を感じないというASDのこだわりの特性もあるということを再認識しました。
片付けについては下記記事のまとめに「片付け後のメリットを感じることが必要」と書きました。
ただ、メリットがないと思ったら片付けないという選択はむしろ当然ですね。。。
でも、これは家だから出来ることであって、色んな人が同じ空間を共有するような環境ではやっちゃだめです。確実にデメリット大きいです。
まとめ ~「なおりはしないが、ましになる」は本当~
以上で、この本の感想や、共感できることを書いていきました。
他にもいろんなエピソードが、面白く、シュールに書かれていますので、好きな人は本当に一気に読めます。(僕がそうです。)
最後に、定型発達の人も最初からできるようになったかとおもうと、それは違っていて、定型発達の人も「出来る方法」を見つけて習慣化しているのです。発達障害の人も、「出来る方法を見つける」ことで、ましにはなると思うのです。
確かに発達障害自体は脳の機能上の問題で治るものではないのですが、この本の題名である、「なおりはしないが、ましになる」はまさにそのとおりです。